安定したストック売上を積み上げる健康管理のインフラ企業『バリューHR』、その強みに迫る

注目日本企業

健康診断のオンライン予約をはじめとして、企業・健康保険組合向けに健康管理に関する様々なサービスを提供する『バリューHR』。

今回はその強みに迫りたい。

事業:「健康管理のインフラ」として企業や健康保険組合の健康管理業務をサポート

バリューHRは「健康管理のインフラ」を目指す企業として、健康管理に関連する様々なサービスをワンストップで提供する。

大きく分けると以下2つの事業を運営している。

  • バリューカフェテリア事業
  • HRマネジメント事業

バリューカフェテリア事業
バリューHRの売上の大半を占めるのが、バリューHRが提供する「バリューカフェテリアシステム」という健康管理プラットフォームに関連する事業だ。

バリューカフェテリアシステムは健康保険組合や企業が導入するシステムであり、主にその組合員・従業員の健康管理を行うために用いられる。

ビジネスモデル「バリューカフェテリア®」
バリューカフェテリアのビジネスモデル

例えば、健保組合・企業が行う健康管理業務の代表として挙げられるのが「健康診断」だ。

だが、健保組合・企業にとって「健康診断」には以下のとおり様々な業務が付随し、意外と面倒なのである。

  • 健診の予約・変更・キャンセルの調整
  • 健診機関との契約
  • 組合員・従業員からの問い合わせ、さらには健診機関からの問い合わせ
  • 適用される健診コースの管理
  • 検診結果の管理
  • 健診実施状況の管理、受診率の管理 など

その点、バリューカフェテリアシステムを使えば以下のように健保組合・企業の健康診断関連業務の負担を軽減することができるのだ。

  • バリューHRが健診機関との契約を代行
  • オンライン上で健康診断の予約が可能
  • 生活習慣病アンケート・ストレッスチェックも健診予約時に実施可能
  • 健康診断結果をオンライン上で管理
  • メタボ対象者への案内一斉送信 など

また、福利厚生の一貫として、バリューカフェテリアシステム上で組合員・従業員がエンタメチケットや旅行プラン等を優待価格で受けられるようにすることもできる。

ただしこれらの機能が全てデフォルトでついているわけではなく、企業・健保組合は自組織に必要な機能を選んで使うことになる。現状では、「健診予約・受信管理」と「検診結果管理」のシステムを使っている企業が多いみたいだ。

引用:バリューHR2020年12月期決算資料

HRマネジメント事業
バリューHRはその他にも、健康保険組合設立のコンサルティングや設立後の運営事務局に係る人材派遣・BPO業務も行う。

健康保険組合の設立から関わることで、スムーズにその後の運営サポートさらにはバリューカフェテリア導入に繋げられていると考えられる。

強み:健保設立において高いシェアを確保し、その後の安定的なストック売上につなげている

バリューHRの強みは健康保険組合の設立からその後の運営支援・システム提供を一貫して提供できることだろう。

健保設立シェアの約5割を占める

2001年から2020年4月1日までに新設された健康保険組合は105組合となるが、バリューHRはそのうちの49組合、割合にして46.6%の設立を支援している。

引用:バリューHR2020年12月期決算資料

設立支援のコンサルティングはスポットでコンサルティング料金をもらうだけであるが、重要なのは設立時から関わることで、設立後の運営業務も任せられる可能性が高まることである。

平均して1年に約5組合しか新設されない健康保険組合の約5割と、設立当初からすでに関係性が構築できていることは、健康保険組合向けにビジネスを行っている競合に対する大きな優位性となっているだろう。

安定的なストックビジネス

バリューHRの売上の大半は以下のように安定的なストック売上で構成されている。

  • ユーザー数に応じたシステム利用料金(ストック)
  • 健康診断精算代行や診断結果の入力代行は従量課金だが、健康診断は毎年行われるものであるため、ストックに近い性質を持つ
  • 健康保険組合の事務局運営支援も、人材を派遣し続けている限りはストック

引用:バリューHR2020年12月期決算資料

しかもバリューHRのサービスは比較的大規模な組織を対象としており、1社導入するだけでも売上へのインパクトは大きい。例として、2020年のバリューカフェテリア導入団体の1団体あたり年間売上は1,400万円を超える。

1団体あたり売上(千万円)

業績推移:安定したストック売上に支えられ増収を続ける

さてバリューHRの業績推移だが、さすが安定したストック売上を確保しているだけあり、2010年から途切れることのない連続増収だ。

営業利益率も変動はしつつ基本的には15%以上であり、高収益体質だといえる。

業績推移(百万円)

興味深いのは売上高成長率の推移で、2014年までは成長率が5%未満だったのが2015年以降は11-19%の高い成長率に変わったことだ。

売上高成長率推移

理由はわからないが、2015年から経済産業省の主催で「健康経営アワード」が始まっており、健康経営への意識の高まりがあったことが追い風となったか?

一方で、2020年はコロナの影響で成長率が落ち込んでいる。健康診断の実施件数がコロナ影響で減少し、バリューカフェテリアの従量課金分の売上が伸びなかったことが一つの要因ではあるが、コロナ収束後に再度成長トレンドに戻せるかは気になるところ。

市場:サービス対象をどこまで広げていくかによって変わる市場規模

バリューHRの主要な顧客は健康保険組合・企業となる。

まず、健康保険組合は2019年時点で日本に1,388団体存在するが(引用:健康組合連合会)、バリューHRはそのうち86組合と契約しており、健康保険組合数ベースでのシェアは6%ほどとなる。

ただし、バリューカフェテリアシステムは利用人数に応じてシステム利用料金が算出されるので、市場規模を考えるうえではバリューカフェテリアシステムの対象となる「人」がどれくらいいるかも重要だ。

その点、健康保険組合の健康保険組合の被保険者数は2019年時点で約1630万人であり(引用:健康組合連合会)、2020年バリューカフェテリアユーザーが134万人いることを考えるとバリューHRのシェアは被保険者数ベースで8%ほどだ。

さらに、2020年のバリューカフェテリア事業1ユーザーあたり単価は約2,500円であることから、金額ベースで見ると市場規模は400億円程度と推計される。

今後、健康保険組合だけではなく協会けんぽまでをターゲットとしていけば、その被保険者数は2300万人を超えてくるのでさらに金額ベースで575億円の市場規模が上乗せされることになる。ただし、協会けんぽの被保険者が勤める企業は中小企業となり、どれほどバリューカフェテリアシステムの導入ニーズがあるかが不明であるのと、相対的に小さい事業者を相手にすることで営業効率は落ちると思われる。

参考までに現在バリューHRが契約している団体の構成員数は平均で5,500人を超えている。

1団体あたりユーザー数

株価推移:順調に右肩上がりのトレンド

気になる株価の推移だが、順調に右肩上がりのトレンドであることがわかる。

バリューHR株価推移

PERは成長スピードが早くなった2015年以降高くなっている。ただし、2020年の成長率の低下が以降も続くと水準訂正による株価下落もあり得るので警戒したいところ。

PER推移

日経・TOPIXをアウトパフォーム。

ヤフーファイナンス

今後:健診予約以外のサービスを利用する企業・健保組合を増やす、そして中小企業へのアプローチがポイント

バリューHRは「健康管理のインフラ」を標榜するだけあり、健康管理に関連するソリューションを幅広く提供している。

一方で、利用されているのは健診の予約・健診結果の管理ソリューションが中心であり、今後いかにその他サービスも利用してもらい、利用者あたりの単価を増やすことができるかが重要となるだろう。

また、現状では健康保険組合や大企業の導入が中心だと思われるが、中小企業の需要を効率的に取り込めるかどうかもポイントだ。

健康保険組合の設立コンサルティングを行っていることの優位性は大きいが、同様のシステムをクラウドで提供する企業はiCAREウェルネス・コミュニケーションズマイクロウェーブなどがあり、今後の導入競争は熾烈になっていくと思われる。

特にこういったシステムは一度導入されれば切替はされにくいので、モタモタしていると導入先が少なくなってしまう。

逆に言えば切替がされにくいシステムということもあり、業績の悪化はしにくいだろうが、成長を続けていくためには新規の企業への導入をどんどん進めていく必要があると考える。

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