アイティメディア:月間4億PVの老舗ネットメディア運営!そのビジネスの強みに迫る

注目日本企業

インターネットやスマホの登場によって、人々の情報収集源はテレビ・新聞・雑誌といったオールドメディアからインターネットに移り変わっている。

しかし、少し前までインターネットの情報は虚実入り混じり、とても信用できるものではなかった。だが、インターネット人口の増加に伴い開設されるようになったのが、法人が運営する情報メディアだ。

もっとも、DeNAのWELQ問題に代表されるように、法人が運営するメディアでさえ質の低いコンテンツを垂れ流す時期もあったのだが、様々な問題を乗り越えて業界の浄化が進み、現在生き残っている法人運営メディアは比較的信頼性の高いプロフェッショナルなものとなっている。

そのうちの一つが「ITmedia」だ。

その運営企業である『アイティメディア』1999年に設立され、ネットメディア黎明期から活動しているまさに老舗だ。今回はそのビジネスの強みに迫る。

事業:ネットメディアを活用して広告・リードジェンで稼ぐ

アイティメディアは主にネットメディアの運営を行っている。その運営メディア数は30に及び、合計した月間のPV数は4億に達する。

アイティメディア2021年3月期決算資料

特に「ITmedia」を冠するメディアサイトが有名だ。ビジネス系のネットメディアとして人気であり、一度は目にしたことがあるのではないか。

ITmedia

さて、これらの運営ネットメディアでアイティメディアはどのように売上をあげているか?それは「広告」と「リードジェン」だ。

広告事業

広告事業については単純だ。

アイティメディアが運営するネットメディア上でバナー広告を掲載したり、タイアップの記事広告を掲載したり、会員に向けたメールマガジンを配信することで、企業から広告料を受け取るモデルである。

アイティメディアは運営メディアが多いので、広告を希望する企業は、自社の顧客に最適なメディアを選定した上で広告掲載を行うことができるのも特徴。

リードジェン事業

「リードジェン」とは「リードジェネレーション」の略語で、見込み客を獲得する活動を意味する。

見込み客を獲得したい企業は、アイティメディアが運営するメディア上で資料等のコンテンツを掲載し、実際にそのコンテンツをダウンロード等した見込み客の情報をアイティメディアが企業に共有するサービスである。

資料ダウンロードする会員は、興味が強い見込み顧客と考えられる(画像:アイティメディア

利用企業にとっては、「興味を持ったユーザーの詳細な個人情報」を共有してもらうことで、その後の商談につなげられることができるという大きなメリットのあるサービスだ。

強み:BtoB企業にとって魅力的、ビジネスパーソンが多いメディア

ネットメディアの運営は以外と難しい。

事業を開始することのハードルが低いので、一時期ネットメディアが乱立されていた時期もあったが、安定的な収益を生み出す事業モデルの構築が難しく、撤退していくケースが多かった。

その中でアイティメディアが生き残れたのは、ビジネス・IT色の強いメディア運営を行い、ビジネスパーソンをユーザーとして集めることができたからだろう。

ネットメディアは、そのメディアのユーザーに特色があればあるほど、その層に向けてビジネスを行っている企業にとってプラットフォーム価値が高くなる。

アイティメディアはビジネスもしくはIT色が強いメディアが多い

特にアイティメディアのユーザーはビジネスパーソンが多いこともあり、BtoB企業を惹き付けることができたのが強い。例えば、「リードジェン」はまさにビジネスパーソンが多いプラットフォームであるからこそ成り立つ事業だ。

業績:リーマン・ショック後の低迷を越えて再成長フェーズ!

アイティメディアの業績は必ずしもずっと順調だったわけではない。リーマン・ショック後には営業赤字に陥っており、売上成長も低迷している。

だがその後は営業利益率がみるみる回復していき、さらにはリーマンショック前の最高水準すらもはるかに上回るようになり、利益額が大きく増加していった。

業績推移

事業別に見ると、リードジェン事業の売上が伸びており、2014年3月期に全体の20%程度だった売上が2021年3月期には約46%を占めるほどになっている。

事業別売上構成

売上成長をリードジェンが牽引している一方で、営業利益については広告事業の営業利益率改善が大きく貢献している。

事業別営業利益率推移

市場:コロナによりさらに注目されるリードジェン

インターネットの広告市場は巨大だ。2020年の市場規模は2兆2,290億円となる(出典:電通「2020年日本の広告費」)。しかも他の広告媒体が停滞する中でも成長を続けている。

また、「リードジェン」については今後さらに注目度が高まると考えられる。テレアポ・DMといった従来の営業手法がコロナにより効果が低くなる中、その代替手段としてデジタルマーケティングによるリードジェネレーションが注目されているからだ。

そもそもコロナ以前の段階からも、デジタルマーケティングによるリードジェネレーションの効率が高いことに気づいていた企業はいち早く取組を始めていたわけだが、コロナを機にこの流れは強まると考える。

株価:28倍以上の株価上昇!?ほぼトリプルテンバガー

アイティメディアの株価は、2009年に100円を切ってから2020年には2,800円を超え、なんと11年かけて28倍以上の上昇を果たしている。

株価推移

2009-2011年の期間は営業赤字を出し、アイティメディアにとって苦しい時期だったが、そこから黒字への復帰、さらには営業利益率の改善も手伝い、EPSの増加に伴い順当に株価が上昇した形だ。

ちなみに2007年4月からのパフォーマンスは日経をやや上回る程度。30倍近い上昇があったとはいえ、その前には90%ほどの下落も経験しているので、仕方ない。

ヤフーファイナンス

今後:リードジェンの成長に期待

アイティメディアの今後だが、コロナにより企業がオンラインを通じた営業活動を検討せざるを得なくなった状況もあり、その一手段としてアイティメディアの注目度は高まると考える。

BtoB企業と相性の良いメディアを運営しているため、テレアポ・DMの代替手段として、アイティメディアの「広告」「リードジェン」が検討されるケースはきっと増えてくるだろう。

特に「リードジェン」は見込み顧客にダイレクトにアプローチすることができることもあり、効率的な営業手法として評価されると考えている。

この点、アイティメディアの成長は今後も期待できると思っている。

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