SMS配信でNO.1の『アクリート』!そのビジネスの強みに迫る

注目日本企業

電話番号を宛先にしてメッセージのやり取りをする、SMS(ショートメッセージサービス)。

スマホ以前のガラケー時代には、友人との連絡手段としてよく利用していたものだ。

だがスマホが登場し、LINEという圧倒的に便利なメッセージサービスが出てきてからは、いつの間にか使うことはなくなった。スタンプもないし、送信料金もかかるし。

もはや過去の遺物。

と思いきや、実態は異なる。実はSMSの配信数はここにきて世界規模で増加しているのだ。なぜか。それは、ビジネス用途での利用が拡大しているからだ。

SMSには、電話番号を宛先にメッセージを送ることができ、かつ開封率が高いという特徴があるのだが、法人が個人に向けて連絡を取る上でこれが実に役立つ。

例えば、

  • 本人認証
  • 支払督促
  • ワンタイムパスワードの発行
  • 予約のリマインド など

確認してもらいたい重要な情報を法人から個人に送る際、開封率が高いSMSは使い勝手がいいのだ。特に、SMSを使った本人認証は、最近増えてきており使った経験がある方も多いだろう。

今回ご紹介する『アクリート』は、企業がSMS配信を効率的に行うためのサービスを提供している。利用が拡大しているSMS配信の市場で、アクリートはどのように自社のサービスを広げていっているのか。その強みに迫る。

事業:SMS活用のプラットフォーム

企業がSMSを活用するシーンは大きく分けると、「認証用途」と「コミュニケーション用途」がある。

認証用途は、例えば新たなサービスに登録したユーザーの本人確認を行うためや、ログインの際の二段階認証等が挙げられる。

アプリ画面で認証
こんなSMSを受信したことはないだろうか?(画像引用:アクリートHP

コミュニケーション用途は、公共料金・家賃の支払督促や飲食店予約のリマインド、またプロモーションの配信等がある。

確実な滞納連絡が可能
SMSは開封率が高いので、メールよりも確認してもらえる(画像引用:アクリートHP

前者の場合は基本的に企業からの「送信」のみを行うことになり、後者については場合によってユーザーからの「受信」という双方向でのやり取りになることもある。

いずれの場合でも配信量は膨大になりがちだが、アクリートは様々な用途に合わせてSMS配信を効率的かつ高品質で行うためのサービスを提供しているのだ。

ウェブ管理画面からの簡単配信

企業が個人の方にSMSを配信する際に、自分の携帯端末から一人一人に対してメッセージを送るのが現実的ではないことは容易に想像できるだろう。

ユーザーからの受信も想定している場合はなおのことだ。

アクリートのサービスを使うと、企業の担当者はウェブの管理画面から、簡単な操作を行うだけで、SMSの配信管理を行えるようになる。

例えば、以下のような豊富な機能が管理画面に備わっている。

  • 複数ユーザーへの一斉送信
  • 本文の一部をユーザーごとに変更して一斉送信(例:宛名を送信先ごとに変える)
  • テンプレートの登録
  • SMSに含まれるURLの自動短縮
  • 配信時間の指定・予約送信
  • 多重送信防止
  • 配信結果のレポート閲覧 など
アクリートHP

SMSに関わらずメルマガ配信を経験したことがある方ならわかるだろうが、ユーザー数が一定規模以上になると、このような管理ツールなくして配信の管理はまず不可能である。

もしやるとしても、時間がものすごくかかるし、ミスが多発する可能性大である。特に、宛名を間違える等、個人情報に関わるような内容は企業の信頼低下にもつながるリスクがあり、絶対に避けたいところ。

アクリートのサービスを使えば、SMS配信に関する業務を大幅に効率化することができ、かつミスを防ぐこともできるのだ。

API接続による他システムとの連携

社内で様々なシステムを利用している企業の場合、アクリートの配信サービスを他のシステムと連携させたい、というニーズもある。

例えば飲食店チェーンを考えてみよう。予約をシステム管理している場合、その予約システムに予約が入ったタイミングで自動的にSMS配信ができれば楽ではないか?

普通に考えるとアクリートのシステムとその予約管理システムは全くの別物なので、このようなことは不可能のように思う。だが、API接続によって予約管理システムとアクリートのシステムを連携させれば、実現は可能だ。

アクリートHP

API接続により他社システムとの連携を可能とすることで、アクリートはより柔軟性の高い配信を可能としている。

初期費用無料で月額/従量課金のモデル

アクリートのSMS配信サービスの導入は初期費用無料で可能だ。

そして配信ボリュームや利用用途によって、月額基本料金・従量課金料金を企業から別途でもらうビジネスモデル。

強み:パイオニアとしての先行優位

アクリートは2003年に個人向け、2010年から法人向けにSMS配信を開始した、業界におけるパイオニアだ。

日本での認知度が低いSMS配信に関していち早くシステムを構築しており、日本初の携帯電話番号認証を開始したりと、先行してSMSに特化したソリューションを打ち出しているのが強みだ。

また、元々はSIerから独立した会社であるため、社内の技術力が高いことも特徴。

もう一点つけくわえたいのが、外資系企業との取引だ。外資系企業のSMS配信を行う際には、配信が通常と異なり、海外SMSアグリゲーター経由での配信となる。アクリートは海外SMSアグリゲーター経由での配信への対応と実績があり、GAFAMを始めとした外資系IT企業のSMS配信をサポートしている。

国内と海外で異なる配信ルート(画像引用:アクリート2020年12月期決算資料

日系企業のみならず、外資系企業への配信サポート実績が豊富であることは、アクリートの大きな特徴の一つとして挙げられるだろう。

業績:国内SMSが躍進中!

アクリートの業績だが、売上・利益共に順調に成長していっている。

業績推移

売上高成長率が2019年2月期に10%を下回っているが、海外SMS売上の後退が理由だ。

売上高成長率推移

興味深いことに、過去にアクリートの売上の大半を占めていたのが海外SMS配信である点だ。なんと、国内売上の倍以上もあったのだ。

だが国内SMS売上がその後急増し、2019年2月期についに逆転。2019年2月期は売上成長率が前年比で9%程度と、相対的に低調な年だったのだが、国内SMS売上だけを見ると実は90%成長をしている。

国内SMS・海外SMS売上推移

クラウドサービスのわりに売上総利益率は低めのモデルだが、これは配信を行うにあたり携帯電話事業者に支払う通信費が原価に計上されるためと考えられる。

なお、国内SMSの方が海外SMSより原価は低く、国内SMS売上割合の増加は売上総利益率の改善要因になる。

しかし、代理店を主とした営業活動を行っていることもあり、販管費は低く抑えられており、結果として営業利益率は高い。

売上総利益率推移

市場:本人認証用途の配信数が急増中

SMSは本人認証の用途で配信数が急増中だ。A2P-SMSの2019年度配信数は前年対比で70.3%増とされるが、本人認証についてはその上を行く146.7%増と爆発的な増え方だ(出典:ミック経済研究所「ミックITリポート」2020年11月号)。

本認認証を行う方法はSMSだけではないが、SMSでの認証は電話番号だけでできることと、SMSの開封率が高いこともあり利便性は抜群で、今後も導入する企業は増えていくだろう。

なお、SMS配信サービスはアクリートを含めた他7社の競合で市場の98.7%を占めているとのこと(出典:ミック経済研究所「ミックITリポート」2020年11月号)。

株価:低調な株価推移

アクリートの株価だが、2020年中は底値から高値で2倍以上の成長をしているが、上場来では低調。

株価推移

2018年7月からのパフォーマンスは日経・TOPIX共に下回っている。人気が出そうなクラウドサービスなわりにどうも注目されていなそうだ。

ヤフーファイナンス

PERは割安ではないが、他のクラウドサービスと比較すると割高でもない印象。成長率も決して低くないのに。

個人的な感想だが、他の業務クラウドと比べるとサービスの切替が容易そうなので、その点が評価を少し下げているのだろうか?実際、2019年2月期に海外SMSの大幅減収を経験したことが、そのことを証明しているとも感じる。

PER推移

今後:実績と市場環境を考慮すると未来は明るいように思える

アクリートの今後についてだが、市場環境については間違いなく追い風が吹いている。なぜなら、セキュリティの観点から本人認証を強化する企業は間違いなく今後増えてくるからだ。

競合が決して少なくないことが懸念だが、その状況の中でも着実に業績を成長させてきた過去の実績を見る限りは、今後競合に遅れを取るとも思えない。

今後数年で本人認証への企業の対応が一気に進められると思うので、その間の業績を注視したい。

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