エニグモ:営利40%以上の高収益企業!海外通販No.1の強みに迫る

注目日本企業

ECサイトといえば、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなど、大手のプラットフォームを使う人がほとんどだ。大体の物はそこで揃うんだから、あえて他の小規模通販サイトを使うメリットはないように思える。

だが、「ファッション=ZOZO」「シューズ=ロコンド」のように、特定の領域に特化することで人気を集めるECサイトもある。

『エニグモ』が運営する「BUYMA」もその一つだ。「BUYMA」は女性には知名度の高いサイトで、運営元のエニグモはなんと営業利益率40%以上を叩き出す超高収益企業である。

今回は高収益を生み出すその企業の強みに迫る。

事業:No.1の海外通販「BUYMA」を運営

エニグモはECサイト・トラベルサイト・メディアの運営など、複数事業を行っているが、売上・利益のほとんどはECサイトの「BUYMA」から生み出されている。

No.1海外通販「BUYMA」

BUYMAは海外通販に特化したECサイトであり、海外ブランドを中心として取り扱っている。

BUYMA

特徴的なのは、BUYMAで販売されている商品が世界中の「パーソナルショッパー」により出品されている点だ。BUYMAを運営するエニグモは商品在庫を持たず、あくまでパーソナルショッパーと購入者をマッチングさせるプラットフォームとしての役割のみを担う。

エニグモ2021年1月期決算資料

そして、購入者とパーソナルショッパーの双方からそれぞれ5%程度の手数料を受け取るビジネスモデル。

ちなみに「パーソナルショッパー」とは、現地でしか購入できない商品を購入者の代わりに仕入れて、配送までを行ってくれる人たちだ。

BUYMAで出品を行うパーソナルショッパー

BUYMAには2021年1月時点で164ヶ国約17万人のパーソナルショッパーが出品していて、ユーザーはそのパーソナルショッパーから、

  • 日本未上陸の海外ブランド
  • 日本未入荷のアイテム
  • 日本国内では完売のアイテム など

レアアイテムを現地価格でお得に買うことができるのだ。

Global BUYMA

エニグモは北米向けにBUYMAの英語版も運営している。

英語版BUYMA

ターゲットユーザーが英語圏の方なだけで、仕組みは日本版のBUYMAと基本的に同じ。ユーザーはパーソナルショッパーから商品を購入する仕組み。

ただし、日本版BUYMAと比べて1件あたりの購入単価に3.6倍の開きがあり、より高級路線のブランディングが浸透している。

エニグモ2021年1月期決算資料

BUYMA TRAVEL

BUYMA TRAVELは、海外のプライベートツアーの予約サイト。

BUYMA TRAVEL

現地在住のガイドが日本語で案内するプライベートツアーを中心に扱っている。

強み:「パーソナルショッパーを活用した通販」という独自路線

エニグモの強みはBUYMAという、他のECサイトと明確に差別化できているプラットフォームを運営している点だろう。

「パーソナルショッパー」のネットワーク

特にBUYMAが独特なのは、「パーソナルショッパー」を活用している点だろう。

実に164ヶ国約17万人のパーソナルショッパーが出品をしているわけで、今から競合他社がこのネットワークを構築することは難しいだろう。

また、そもそも競合他社が自社のプラットフォームにパーソナルショッパーを積極的に活用したいかどうかも疑問だ。

パーソナルショッパーとの取引には、一般的な通販事業者との取引とは異なる独特の文化(?)が存在する。例えば、パーソナルショッパーは在庫を持たずに、注文が入ってから仕入れを行うことが多々ある。

そのため、注文された商品をパーソナルショッパーが仕入れることができなかった場合、その注文はキャンセルになる。BUYMAのユーザーはこの文化に慣れているため、そもそもの注文の前に買付ができるかどうか確認したりする。

だが、このような文化が浸透していない一般的なECサイトの中で、パーソナルショッパーと他の事業者が混在して出店していると、ユーザーは混乱するだろう。このようなこともあり、競合他社がパーソナルショッパーを自社のプラットフォームで積極的に活用するとは考えにくい。

それでは新たにパーソナルショッパーに特化したプラットフォームを一から作り上げるかと言うと、「それならBUYMAでいいじゃん」ということで新規で取り組むメリットはあまりない。しかも海外通販の市場規模は国内通販と比べて小さいので、なおさら取り組むメリットが少なくなる。

パーソナルショッパーに特化したECプラットフォームという点を作り上げたという点がすでにBUYMAの参入障壁となっているのだ。

「パーソナルショッパー」との取引を前提としたサービス設計

海外から物を買うのは不安が多いが、パーソナルショッパーという「あくまで個人」と取引するとなるとなおのことだろう。

だが、BUYMAはパーソナルショッパーとの取引での不安を払拭するため、様々な工夫を行っている。

例えば、パーソナルショッパーは在庫を持たずに、注文が入ってから商品を仕入れて配送を行うことが多いことは先程述べた通りだ。となると、不安に思うのが代金だけ持ち逃げされることだろう。

だが、BUYMAでは代金の決済が商品到着後に行われるので、そのようなリスクは回避できる。また、商品到着後の代金決済は、サイズ違い・色違いや偽物かどうかの確認をすることができる点でも安心だ。

BUYMAの決済は後払いで安心

その他補償制度も充実しており、海外取引をする上での不安点を細かに解消する努力がなされている。

業績:営業利益率40%以上高収益体質で成長を続ける

エニグモの主事業であるBUYMAは、取引された商品の販売額の一部を手数料としてエニグモが受け取るビジネスモデルだ。そのため、基本的には取扱高を増やすことが重要となる。

その点、エニグモの総取扱高は一貫して右肩上がりで、それに応じて売上も増加している。

テイクレート(売上÷取扱高)は10-12%間を推移している。

取扱高・売上高推移

また、エニグモの特徴としては営業利益率が高いことにある。なんと40%を超える、超高収益体質なのだ。

売上高・営業利益推移

しかも注目したいのは、販売管理費を売上の40%程度ほど使っていても、なおのこと営業利益が40%残っていることだ。つまり、売上総利益率が80%以上もあるということだ。

ちなみに販売管理費の大半を占めるのは人件費と広告費だ。労働集約的なビジネスではないため、人件費の割合は今後低くなっていく可能性がある。そうなると、さらに収益性が高まる可能性すらある。

販売管理費率の推移

気になるのは、会員数の増加に対してアクティブ会員数が増えていない点だ。20%を超えていたアクティブ会員率が近年は20%台を切るようになっている。

新規に獲得している会員が購入をせずにゾンビ会員になってしまっているのか、既存会員がリピートしなくなっているのか、いずれにしてもアクティブ会員の減少はプラットフォームでの取引が減る要因にもなるので懸念だ。

会員数推移

一方で、ARPU(ユーザーあたり年間購入額)は増加している。BUYMA上での取扱高を増やすには、基本的にアクティブ会員とARPUを増やす必要があるので、この点は好材料だ。

ARPU推移

市場:12兆3,300億円!巨大な米国ファッションECの市場規模!

日本のファッションECの市場規模は2019年で1兆9,100億円(出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」)で、EC化率は13.87%となっている。エニグモの2020年取扱高は約628億円で、シェアとしては大体3%となる。

だがエニグモはGlobal BUYMAで北米の市場も狙っている。米国の「アパレル・アクセサリー」カテゴリの市場規模は桁が違い、円レート100円計算で12兆3,300億円(2019年・EC化率26.2%)に達する(出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」)。

株価:8年間で株価は10倍以上!テンバガー達成

2012年に150円ほどだった株価が2020年には1,700円を超えており、8年間でテンバガーを達成している。

株価推移

2012年7月からのパフォーマンスで日経・TOPIXをはるかにアウトパフォーム。

ヤフーファイナンス

今後:国内BUYMAをキャッシュカウに、海外BUYMAを次なるスターへ

エニグモの今後についてだが、EC自体の市場規模はまだまだ伸びていくことが予想されることを考えると、市場規模の拡大についていくだけでも、ある程度の成長が見込めるのではないかと思う。

特にBUYMAについては独自路線で運営しており、他のECサイトとは明確に差別化がなされているので、他社との激しい競争状態に晒されないと考える。

だが、国内BUYMAの一本足打法状態からの脱却は目指したいところ。

海外版BUYMAは、巨大な北米市場をターゲットとしているので、少しのシェア獲得でもエニグモの売上に与える影響は絶大だろう。今後のエニグモが大きく成長できるか、成否を握るのは海外BUYMAだ。

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