株価200倍以上!?「エスプール」障がい者雇用ビジネスの強みに迫る

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株価が10倍になる銘柄を「テンバガー」と呼ぶ。一生に一度でもいいからテンバガー銘柄を掴みたいと、投資家なら誰しも思うだろう。

テンバガー銘柄というと、テックセクターの華やかな企業から出てくるイメージだが、過去を遡ると比較的地味な業界でもテンバガー銘柄が出現していることがわかる。

今回紹介する『エスプール』もそうだ。

人材派遣・雇用支援といった特段新しくない業界に属しながらも、株価上昇率は底値からなんと200倍以上。底値で50万円だけ投資していれば、その後億万長者になれた計算だ。

なぜエスプールの株価はかくも上昇したのか?リーマンショックの危機的な状況を乗り越えて、ビジネスを成長させたエスプールの強みに迫る。

事業:”仕組みづくり”で社会課題を解決する人材企業

エスプールは人材に関する様々なソリューションを提供しているが、大きく分けると「ビジネスソリューション事業」と「人材ソリューション事業」に分けられる。

ビジネスソリューション事業:独自アウトソーシングサービス

ビジネスソリューション事業では、主に以下の人材アウトソーシングサービスを提供している。

  • 障がい者雇用支援
  • ロジスティクスアウトソーシング
  • 採用支援アウトソーシング

障がい者雇用支援

障がい者雇用支援事業はその名の通り、障がい者を雇用したい企業をエスプールが支援する事業だ。

エスプールプラスHP

障がい者の法定雇用率が定められて以来、企業は一定割合の障がい者を雇用することが求められている。その点エスプールは、障がい者の募集から雇用継続までをワンストップで提供し、企業の雇用活動を総合的にサポートする。

障がい者の雇用支援を行う人材企業は他にも存在するが、エスプールの支援スキームは相当に個性的で、「農園」を活用したスキームを提供する。

エスプールプラスのビジネスモデル
障がい者は農園で働く(画像:エスプールプラスHP

エスプールが所有する農園を、障がい者雇用を行いたい企業に貸し出し、その農園で雇用した障がい者に働いてもらうというスキームだ。もちろん、企業への障がい者の紹介もエスプールが行う。

なぜ農園か?

障がい者を企業が雇用したとしても、適した仕事を与えられなかったり、オフィス環境が障がい者に配慮されていない場合があったりと、課題は多い。このような状況では、せっかく雇用しても早期退職に繋がってしまう。

そこでエスプールは、自社が保有する安全・清潔な障がい者への配慮がなされた農園を企業に貸し出し、障がい者が安心して働ける環境を提供するようにしているのだ。そして同時に、企業の法定雇用率を達成できるようにサポートをする。

また、障がい者に対して無理に仕事を与えるのではなく、「農業」を通じた社会貢献をしてもらうことで、やりがいを持って仕事に取り組んでもらうことを目指している。このことにより、雇用した障がい者の早期退職を防止することもできる。

障がい者を紹介して終わりではなく、”仕組みづくり”によって雇用継続までをサポートする、社会的意義のある事業と言えるだろう。

その社会的意義の高さを反映するように事業は成長しており、今ではエスプールの主力事業の一つとなっている。

ロジスティクスアウトソーシング

ロジスティクスアウトソーシングは、企業の物流関連のバックヤード業務をアウトソーサーとして支援する事業だ。

通販サイト等における受注処理・コールセンター・入出荷業務の支援や、3PLの遂行まで幅広いサービスを提供する。

ただ、エスプール内の事業において特段成長している分野ではなく、注力していないのかもしれない。

採用支援アウトソーシング

採用アウトソーシングは、企業の人事に変わり、エスプールが採用業務をアウトソーサーとして支援するサービスだ。

特にアルバイト・パートの採用に特化しており、応募者対応・面接日程設定・面接日程リマインド等といった業務を支援することで、応募からの採用率改善を目指している。

OMUSUBIの説明図:1.応募 2.面接設定 3.スケジュール連携 ポイント1:応募者即対応 ポイント2:応募受付専門オペレーターが常駐 ポイント3:土日夜間・長時間対応 ポイント4:前日リマインド連絡 ポイント5:応募者追いかけ連絡(3コール・2メール) ポイント6:数値管理の徹底
応募対応等をエスプールが代行(画像:エスプールリンク

面接に案内できた件数のみに課金が発生する成果報酬型課金のビジネスモデルで、応募者対応の手間を削減しつつ、エスプールがスピーディーな応募対応を行うことで採用率改善も見込めるという低リスク多メリットのサービスだ。

エスプール全体における売上規模はまだ小さい事業だが、順調に成長している事業である。

人材ソリューション事業:長期の人材活用

人材ソリューション事業では、以下のように人材派遣・人材紹介を中心としたソリューションを提供している。

  • コールセンター
  • 販売支援
  • オフィスサポート
  • アルバイト・パート紹介

中でもコールセンターと販売支援の人材派遣が売上の多くを占めており、特にコールセンター派遣についてはエスプールで最も売上をあげているサービスだ。

「グループ型派遣」に特徴があり、エスプール社員が派遣リーダーとなって、複数のスタッフをグループ単位で企業に派遣をしている。

人材ソリューション事業
エスプールの社員もスタッフと一緒に派遣される(画像:エスプールHP

強み:新規事業を創出する力

現在でこそ業績好調のエスプールだが、リーマンショックの影響で低迷していた時期もあり、常に順風満帆だったわけではない。しかし、リーマンショックを乗り越え、現在のエスプールはリーマンショック前のピークを遥かに上回る業績をあげている。

積極的な新規事業の展開

エスプールのこの強さの秘密は、新規事業を創出する力にあると考えている。

エスプールの決算説明資料を過去から遡って読んでみると、様々な新領域にチャレンジをしていっては、撤退していく歴史があったことがわかる。例えば、システム開発やモバイルマーケティングにチャレンジしていた時期もあったが、今の決算説明資料を見るとそれら事業に関する言及は全くない。

一方で、エスプールの主力事業の一つに成長した障がい者雇用は、開始当初の2012年に6700万円ほどの売上しかなかったのが、2020年には33億円の規模にまで達している。たった10年ほどの期間で50倍にまで売上を伸ばしているのだ。

このように積極的に新規事業を展開していった結果として、危機的な状況に陥っていたリーマンショックの時期から劇的な回復を遂げることができたのである。

障がい者雇用の”仕組み”が作る競合優位性

人材ビジネスは、いかに人材を集めて企業とマッチングすることができるかがポイントだ。その点、人材を集める「マーケティング力」と企業を集める「営業力」が物を言うのが一般的だ。

逆に言えば、この二点のどちらかが備わっていれば人材ビジネスを始めることができるため、人材業界は比較的参入障壁が低い業界となっている。

だが、エスプールが作った障がい者雇用の”仕組み”については他社が簡単に模倣できるものではない。なぜなら、農地の仕入れ、農家とのリレーション構築、安全管理体制など、単なる人材のマッチングを超えた体制構築を行う必要があるためだ。

しかも、農園での障がい者雇用スキームを作り上げたことで、就労が難しいとされていた知的・精神障がい者の雇用を実現した点も重要だ。

障がい者の法定雇用率が定められてから、企業も障がい者の雇用に積極的になっていったのだが、実のところ軽度の障がい者を優先しての採用が行われていたのが現実だ。重度の障がい者については、企業側の受け入れ体制が整っていない等の問題があり、なかなか難しいとされていた。

しかし、エスプールの農業スキームは重度障がい者に対しても継続的に就労できる環境を提供しており、そのノウハウがまたエスプールの強みとなっていっているのだ。

業績:リーマンショックを乗り越え急成長!

それではエスプールの売上推移を見てみよう。

ご覧のように2000年から2008年まで連続増収を続けていたものの、リーマンショックの影響を受けその後低迷。2008年の売上水準に戻るまでに実に7年の期間を要した。

長い低迷期があったのです

営業利益率もリーマンショックの影響で赤字が2年続き、その後も1桁台前半と苦戦していたことが見て取れる。一方で2016年からは一気に改善し、2020年には二桁台に乗せている。

営業利益率の改善が著しい

事業別に見ると、特に派遣の人材ソリューション事業の成長が顕著であることがわかる。ビジネスソリューション事業の売上成長ペースも決して低くはないのだが、人材ソリューション事業のペースと比較すると見劣りしてしまう。

人材ソリューションの伸びがすさまじい

だが、ビジネスソリューション事業に含まれる障が者雇用サービスの売上推移を見ると興味深い事実が浮かぶ。障がい者雇用サービスは2021年にはビジネスソリューション事業全体売上のたった3.83%しか占めていなかったのが、2020年にはなんと60%近くまでに成長しているのだ。

いかにエスプールが短期間で事業ポートフォリオの組替に成功できたかを物語っている。

見事なまでの事業ポートフォリオ転換

ちなみに人材ソリューション事業の急成長を牽引したのはコールセンターサービスである。

圧倒的なコールセンター売上

一方でロジスティクスアウトソーシングの売上は低調推移。採用支援アウトソーシングについては今後の成長に期待したい。

採用支援はどれほど伸びるのか?

市場:人材派遣・BPO共に大きい市場規模、そして障がい者雇用の拡大

エスプールがビジネスを行っている人材派遣・BPO業界は共に市場規模が大きいことが特徴だ。

人材派遣業界については2019年度において6兆6,800億円であり(出典:矢野経済研究所『人材ビジネス市場に関する調査』)、非IT系BPO市場については1兆7,733億円となっている(出典:矢野経済研究所『BPO市場に関する調査』)。

また、障がい者雇用については、国が企業に対して一定割合の雇用を「法定雇用率」として義務付けている。法定雇用率は年々その割合は引き上げられており、直近2021年3月においても0.1%引き上げられ、2.3%となった。

さらに、2020年度においては知的障害者の雇用数が前年比4.5%増加、精神障害者の雇用数が前年比12.7%増加と、身体障害者の0.5%増加と比較して大きく増加している(出典:厚生労働省『令和2年障害者雇用状況の集計』)。エスプールの雇用スキームは特に知的障害者・精神障害者の雇用に適しており、企業の雇用が積極化していることは追い風と言えるだろう。

株価:10年で株価200倍以上の高騰!

エスプールの株価だが、、、2011年に5円だったのが2021年には1,031円と、実に200倍以上の高騰を記録している。

ただし、業績が低迷していた時期が続いていたこともあり、底値から持ち続けるにはそれなりの精神力が必要だっただろう。しかも、底値に転がり落ちるまで株価の95%が蒸発していたことを考えるとなおのことだ。

一貫した右肩上がりに見えるが、実は95%の株価蒸発も経験

2006年2月から2021年5月までのパフォーマンスは日経・TOPIXを遥かにアウトパフォームしているが、実は2017年まではアンダーパフォームしている。

株価が低調な時期が長かったため、アンダーパフォームの時期も長い

株価200倍にまでなったとは言え、株価が過大評価されているというほどではなく、2020年11月期でPERは38倍。決して低くはないが、非常識に高いわけでもない。

リーマンショックで業績が悪化したことにより売られたものの、その後の回復からの高い成長率への移行、さらには営業利益率の改善など、好業績による株価上昇とPERの水準訂正が掛け合わさって株価が急騰した形だ。

壊滅的状況から急回復するとPER水準訂正も合わさって株価急騰しやすい

今後:障がい者雇用のさらなる成長に期待

エスプールの今後についてだが、期待したいのはやはり障がい者雇用。

独自のスキームにより他社との差別化がはっきりとなされている事業であるし、今後法定雇用率の引き上げ等により企業の障がい者雇用ニーズが高まっていくことを考えると、中長期的にエスプールの成長に寄与すると考える。

また、単純にこれまで雇用が難しいとされていた重度の障がい者の雇用を促進している点において、社会的意義のある事業だと感じ、個人的にも応援したい。

人材ビジネスはアセットを持たずに始められるビジネスなので、参入する企業が多い領域だが、このように”仕組み”からよりよい雇用環境を作っていこうと考えている企業にこそ生き残っていってほしいものだ。

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