医療従事者向けの情報ポータルサイトで急成長したエムスリーをご存知の方は多いだろう。2021年5月現在その株価は5兆円を超える、日本を代表するグロース銘柄だ。
実は自動車業界にもエムスリーと似た事業を展開している企業がある。それが『マークラインズ』だ。
マークラインズは自動車業界向けに情報ポータルサイトを提供して成長を続けているが、今回はそのビジネスの強みに迫りたい。
事業:自動車業界に特化した情報ポータルサイトを提供
マークラインズは自動車業界に特化して様々なサービスを提供している。
情報プラットフォーム事業
マークラインズの全社売上の大半を占めるのが、自動車業界に特化した情報ポータルサイトの運営を行う「情報プラットフォーム事業」だ。
利用料金は人数に応じて48〜120万円の年間契約。契約をすると、以下のような情報を全て閲覧できるようになる。
- 生産/販売台数
- 部品メーカー情報
- 部品の納入情報
- 各種調査レポート
- モデルチェンジ情報
- CASEデータベース
- メーカー拠点情報
- 業界ニュース など
通常このような情報を入手するには、企業は個別で情報を購入しなければならないが、マークラインズと契約をしていれば固定の利用料金であらゆる情報を入手することができる。
ベンチマーキング関連事業
競合他社の車両を分解して調査・分析、レポートとして販売する事業。また、車両や部品の調達代行も行う。
2020年12月期においてマークラインズの売上の10%以上を占めている。
市場予測情報販売事業
自動車の生産台数や販売台数の予測サービス。
コンサルティング事業
技術調査やコスト比較分析など、様々な分野のコンサルティングを行う事業。
プロモーション広告事業
企業の製品やサービスをマークラインズのポータルサイト上でプロモーションする事業。
マークラインズのポータルサイトを使っているのは自動車業界の者であり、情報を積極的に収集しようとするモチベーションの高いユーザーが多い。そのため、高い広告効果が期待できるのが特徴だ。
強み:参入障壁が高い、ストック型の安定的なビジネス
マークスラインズの強みとしては以下のような点が挙げられる。
- 情報プラットフォーム事業の安定的なストック売上
- 専門性の高いポータルサイトであるがための高い参入障壁
安定的なストック売上
マークラインズの「情報プラットフォーム事業」は契約が続く限り、企業からの年間利用料が支払われる、安定的なストック型ビジネスモデルだ。
年間利用料金は48〜120万円程度だが、自動車業界に関するあらゆる情報収集がこの程度の金額でできるのであれば、お得なのではないか。そのため、解約率も低いと考えられる。
高い参入障壁
一般的に情報ポータルサイトを作ること自体はそれほど難しくはなく、参入障壁は高くない。だが、専門性の高い情報を扱っているとなると話は別だ。
マークラインズのポータルサイトでは単なる業界ニュースに留まらず、調査レポートなど専門性の高い情報を数多くサイト内で取り扱っている。海外とのネットワークを海外企業との業務提携等により広げていくことで、海外情報の取り扱いも豊富だ。
マークラインズが築き上げた海外も含めた情報のネットワークを後発で追いつくのは容易なことではなく、高い参入障壁となっている。少なくとも国内においては競合がいない状態だ。
業績:30%以上の利益率を維持しながら成長継続!
マークラインズの売上はリーマンショック後の一時期を除いては、二桁成長が続いている。リーマンショック後には最大10%近い減収を経験しているが、裏を返せばその程度で済んでいると言える。
経常利益率も30%以上と高収益体質。
海外展開も順調に推移しており、2020年12月期には海外売上が全体の半分に迫ってきている。
情報プラットフォーム事業が売上の大半を占めているが、その他売上の割合も徐々に大きくなってきている。
市場:潜在顧客80,000社!海外顧客の獲得が成長の肝
自動車業界に特化した情報ポータルを運営するマークラインズだが、その対象とする顧客は当然のごとく自動車業界の企業となる。
その数はマークラインズの考えだと日本だけで9,800社あり、海外も含めるとなんと80,000社に達するという。マークラインズはすでに海外企業へのサービス提供について十分に実績があるため、素直にこれら80,000社が潜在顧客と考えていいだろう。
マークラインズの「情報プラットフォーム」の1社あたりの提供単価は50万円以上であるため、「情報プラットフォーム」の市場規模は少なくとも400億円程度あると考えられる。
2020年12月期「情報プラットフォーム」売上は20億円程度なので、まだ市場の5%程度しか獲得していないことになり、成長余地は十分。しかも、国内においては目立った競合がいない状況。
株価:右肩上がりの推移
株価は右肩上がりの推移。
日経・TOPIX共にアウトパフォーム。
今後:海外展開にも成功しており、成長余地は十分!
マークラインズの今後について、個人的にはまだしばらく成長を続けていけると考えている。
潜在顧客数は全世界で80,000社に対して、2020年末時点での契約社数は3,637社、未だ全体の4-5%としか取引をしていない状況だ。日本国内には目立った競合はおらず、今後も着実と取引社数を増やせると考えられ、さらに海外展開の実績もしっかりと出している。
情報プラットフォーム事業で契約関係を開始した顧客に対して、他のサービスによるアップセルを狙っていくこともできることを考えると、成長余地は十分すぎるほどあると考える。
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